ロバート・キャパ(本名:エンドレ・フリードマン)は、1913年、ブダペストに生まれ、 17歳のとき、ハンガリーを離れ、ベルリンにおいて写真と出会い、 パリで写真家として独立しました。 その後、スペイン市民戦争、日中戦争、第二次世界大戦下のヨーロッパ、 イスラエル建国時の中東戦争、インドシナ戦争など、 5つの歴史的な戦争を経験し、戦争写真家として活躍しました。 1954年5月25日、インドシナ戦線(現ベトナム)で取材中、 地雷に触れて、キャパはこの世を去りました。


写真家として知られるロバート・キャパ。実は当初、作家になることを夢見ていました。しかしキャパは、激動の20世紀のうねりに巻き込まれるがごとく、祖国ハンガリーから、ドイツ、フランス、アメリカを点々と渡り歩くことになり、話す言葉もその都度変わらずを得ず、文筆活動に腰を落ち着けて取り組めるようになったのは、終戦後のアメリカでした。ヘミングウェイとの交流のあったキャパは、自伝を書き始めた頃手ほどきを受けるなどして、その才能を磨いていきました。
そして1947年、「ちょっとピンぼけ」を上梓。ハリウッド映画の脚本にするつもりで描かれたこの第二次世界大戦におけるキャパの体験談は、その人間味あふれる語り口が一気に読者を魅了する名作で、長らく絶版となっていたアメリカにおいて、この度文学作品集の最高峰とされる、ランダムハウス社の「モダン・ライブラリー」シリーズ入りし、再版されました。日本における「ちょっとピンぼけ」は、駆け出し時代のキャパがパリで交流のあった二人の親友、川添浩史氏と井上清一氏の共訳により1956年に出版され、いまだに版を重ねています。